冬布団との別れ

まだ5月というのに日中の気温は気象庁の定める「真夏日(30度以上)」に届き、迫りくる夏本番では「猛暑日(35度以上)」に続く新たに設定された「酷暑日(40度以上)」の到来は誰の心にも確信の域にあり、ことあるごとに「昔は良かった」などとのたまう如何にもうざったい大人達の懐古もこれに限っては賛同されるのではないか。

とはいえ夜間の気温は服装によってはまだ寒さを覚える具合の日も多く、冷たい空気の中であたたかな布団に包まる心地は手放し難く未練を抱えるのだが、日に日に高まる気温に操られ気付けば布団を蹴飛ばした状態で目覚めることも多くなり、どれほど愛し求めた相手であろうといずれ必ず嫌ってしまう日がくるのなら、せめて美しい思い出として残せるように、嘘の一つもつかないで、平気な顔で別れましょう。どうせ忘れることすらできないのだから。

ということで冬布団から夏布団への寝具の交換をした。交換自体は押入れに仕舞っておいた夏布団を引っ張り出して用意するだけで大した手間もなく終えてしまうのだが問題は冬布団にある。想定では埃を落とし一度洗濯をして袋に詰めて寝かしておくつもりで、実際それで普通は問題ないと思うのだがウチでは猫を飼っておりこいつが余計な問題を増やしている。

問題とは抜け毛である。冬用に保温性能の高い毛足の長いカバーやシーツを使用しているのだが人に心地のよい寝具は猫にも心地がよいらしく、持ち主が使用中でもそうでない時も我が物顔で好き放題に転げ回っては布団を堪能するおかげで冬の間の抜け毛がこれでもかと絡み合い元の繊維と抜け毛がもはや一体の布の如くといった様相。それなりの頻度でリントブラシ(服の毛玉やペットの毛を取るあのブラシ。今調べた)でせっせと掃除はしていたのだが完璧ではなく、庭に出てどれだけ叩こうと無限に抜け毛が存在を主張し続けどう足掻いても勝ち目もなく、処分するしかないと判断した。

この冬布団を購入したのはそれこそこの冬の始めで1シーズンしか使用していない。別に高級だったりこだわりの品ということはなくニトリでお値打ち価格で購入させていただいた庶民的なそれでしかないのだが、それでも1シーズンで布団を処分というのは貧乏人には受け入れ難い決断であり悔しい限りである。

冬布団を片付ける足元では居心地のよい住処を破壊する狼藉に対する抗議なのか、先程食べたばかりのオヤツ(ちゅ~る)を寄越せという催促か、あるいは両方なのか如何にも不満気な鳴き声で延々訴えてくる猫に「にゃあちゃうねんこのバカ猫が」と返すくらいが精々であった。