喫煙歴

タバコを吸っている。吸い始めた切っ掛けは、まだ下の毛も生え揃わない二十歳過ぎの頃に一人で留守番をしていた時、両親のタバコが居間のテーブルに置いてあり、暇が過ぎたのと只々興味本位で手を出してみたことを覚えている。煙は苦くて不味いわ、妙に頭がクラクラするわと全くろくでもないだけだったのだが、それ故に何故こんなものを人は好むのかと、より興味を持ってしまい、両親の目を盗んではタバコも盗んで試してみる内に、慣れてきたのと喫煙行為が楽しくなってきたのと、眩みや喉への刺激を求めるようになり気付いたら自分で購入して吸い始めるようになってしまった。
もし子供や周りの人間に喫煙を望まないのであれば極力身近にタバコそのものを存在させないことが肝要だと思われる。そもそも手の出せないものには手を出さないものだ。

今でこそ一箱500円を越えるような値段となっているタバコだが、当時はだいたい一箱260円前後でせいぜいジュース2本程度の値段で子供でも躊躇なく手が出せてしまう値段だったこともあり、自分の小遣いの範囲で夜中にこっそり近所の自動販売機で購入するのに苦もなかった。ちなみに当時は自動販売機での購入にtaspoも不要だった。

両親が吸っていた銘柄はマイセンことマイルドセブン(今はメビウスに改名されている)だったが、おそらくは格好いいという理由だけで赤ボロこと赤のマルボロを吸っていた。マイセン等は吸い口のフィルター部分が紙そのもので唇にくっついたり紙の味がして気持ち悪かったりするのもあり、その点マルボロも紙ではあるものの厚みのある茶色いプリントの紙でそれらの欠点が多少なりマシだったのもあったように思う。

タバコを吸うようなクソガキの周りには類を同じうするクソガキが集まる訳で悪友の多くも喫煙をしていた。それぞれの銘柄を交換してみたり色々と試してみたが慣れもあるだろうが自分には赤ボロが合っているようで銘柄を変えることはなかった。

いつ頃かはっきり覚えていないが、それが流行り出した頃に友人に勧められて吸ってみたのがアメスピことアメリカンスピリットという銘柄だった。香料や保存料等が使用されていない100%無添加のたばこであることを売りにしたそれは、マルボロや他の紙巻きタバコが5分程度で燃え尽きるのに比べ、10分以上の燃焼時間を保つのが特徴的だった。赤ボロを吸っていた自分にとって違和感の無い吸い味で、且つ長い燃焼時間でコスパに優れるとあって、なんとなくではあるが10年単位で吸い続けた赤ボロから初めて乗り換えることとなった。

それからまた10年単位でアメスピを吸い続け、今も続いてはいるのだが、会社がJTに買収され、値段が上がり、一箱20本入りが当たり前の紙巻きタバコであるのに、価格を据え置いたまま商品の内容量やサイズを減らす「実質的な値上げ」ことシュリンクフレーションよろしく一箱14本入りとなんとも中途半端な本数に改悪するなどが続いていて、タバコそのものに文句はないが販売元への不信や文句が募り嫌気を感じている。一箱の本数が減ると出先で無くなりがちだったり、買い出しの頻度が上がったりと単純な不便が大きいので見た目の値段を下げるような無駄な真似をするより消費者の利便を考えてほしいものである。

度重なるタバコの値上げ、というかタバコ税の増税は地味に大きく、少しでも節約やタバコ代を抑えられないかと考えるのは喫煙者が皆思うところだろう――そもそもタバコを辞めろとは非喫煙者の総意だろうが馬に念仏を聞かせる趣味は理解し難い――、そこで目をつけるのが手巻きタバコである。なんのことはない、売られている紙巻きタバコを、葉っぱ・フィルター・巻き紙とバラバラの状態で買い集め、自分の手で紙巻きタバコの形に作ることで費用を抑えるのが手巻きタバコである。

シャグと呼ばれる手巻きタバコ用に売られている葉っぱ単体にも様々な銘柄があるのだが、以前はアメスピのシャグも売られていてこれが買えればよかったのだが、自分が手巻きを始める少し前に終売となってしまっていてそれは適わなかった。本当にJTは許し難い。30種くらいの銘柄を試してみたが、アメスピと一番違和感なく味わえるのがプエブロというこれまた無添加100%を謳う無添加タバコである。今はプエブロのナチュラルというフレーバーを好んで購入している。

それぞれのパーツに多種多様な商品があり、タバコ葉をどれだけ使うかタバコ自体の消費頻度など様々な変数が絡むので一概には言えないが、ざっくり大雑把な計算で現行の一箱20本入りタバコに比べて、一箱分100円ほどの節約に私の環境ではできている。とはいえ出先でいちいち手巻きは面倒なので職場や外出時用にこれまで通りにアメスピを持ち歩き、家では手巻きタバコをちまちま用意して吸っている。

他にも加熱式タバコから煙管やパイプなどタバコの楽しみ方は多々あるが、紙巻きタバコの利便性は突出しており今のところはこれに落ち着いている。いずれは医者から通告など受けて死にたくないが禁煙もしたくないなど駄々をこねることになるのだろうが、それまでは紫煙を燻らせ部屋の壁紙の色を染め続けるのだろう。